hyuga_kabocha(まっきー)のブログ

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『笑う男』フェドロの裏切りとは

★フェドロの裏切りとは

 ひとことで言うと、「ジョシアナ侯爵からクランチャーリー卿に乗り換えようとした」ということではと思います。

 ジョシアナの使用人でありながら、瓶の開封官という立場を利用してジョシアナに隠れてクランチャーリー卿に近づき、クランチャーリー卿を操ることで力を得ようとしたことが、使用人が主人を裏切ったということではと思いました。

 しかも、クランチャーリー卿(グウィンプレン)とジョシアナが結婚すれば、フェドロはグウィンプレンを介して妻となるジョシアナをも動かせる影響力をもつことも予想されます。ジョシアナとクランチャーリー卿の結婚が命じられたときのフェドロの表情はこのためで、この結婚によりフェドロからジョシアナへの下剋上というか裏切りが完成したのではと。

 

 あとつけ加えるなら、フェドロが「庶子を馬鹿にしている=ジョシアナを馬鹿にしている」のがバレたのもジョシアナにとっては裏切りなのかも。

 

もう少し細かく書いていきます。

 

★フェドロについての情報を補足しながら整理

・フェドロ自身は貴族ではない。

・非常に有能だったため、王宮の使用人となり、王妹で侯爵というとびきりの貴族に仕える。

・貴族でない者が貴族に仕えるのは極めて異例(史実としてはあり得ない。フィクション)

・フェドロを重用するジョシアナに、フェドロは大恩があることになる。

・フェドロは忠臣を装っているけど庶民なので貴族は大嫌い。

・さらに上にいく野心がある。

 

 あまり細かくはわからなくとも、単純に、ガーデンパーティーでのフェドロの様子から、「忠臣のふりをしているが貴族が大嫌いでジョシアナもまとめて全部馬鹿にしている」ということがわかればいいのかなと。

 

 そんなところにコンプラチコの告白文入りの瓶が流れ着き、フェドロが手に入れます。

 

 再演では、ジョシアナが一座を観に行く前にフェドロがこの瓶を持っていたことで、この時点でフェドロは瓶の中の文を読み、「一座の口裂け男=グウィンプレン=コンプラチコに口を裂かれたクランチャーリーの嫡男」と気づいていることが示唆されたようです。(原作ではフェドロがジョシアナを一座へ誘導したはず)(ミュージカル版もフェドロが裏で画策した?)

 

★なぜフェドロは「瓶の開封官」に? ~フェドロの企み~

 そして一座でジョシアナがグウィンプレンに興味を持ち、フェドロはグウィンプレンが使えると判断するわけですが、フェドロはジョシアナの使用人であり、このままではジョシアナを介してしかグウィンプレンに関われません。

 

 そこで、公的に「瓶の開封官」という役職に就くことを希望し、それが認められます。これにより、フェドロが開封した瓶の中の告白文も公的に存在が認められ、フェドロも瓶の開封官として、ジョシアナには内密に、告白文とその内容に関わり、動けるようになるわけです。このことを隠して、「瓶の開封官に任命してほしい」とジョシアナへ願い出るのが裏切りの第一歩。

 そしてコンプラチコの生き残りを捕えて(瓶の中の告白文の真偽を確かめるためと瓶の開封官としての立場を使った?)、グウィンプレン=クランチャーリー卿と証言させ、グウィンプレン=クランチャーリー卿と確定させました。

 

★「使用人」から「裏で大貴族を操る者」へ

 クランチャーリー卿とわかればクランチャーリー家の者が世話をすればいいのですが、貴族の世界を何も知らないグウィンプレンに、瓶の開封官として、素性を知る数少ない者として、貴族の世界を教える者として、フェドロはちゃっかり近づいて取り入ります。(だからクランチャーリー家の家令が怒っている)

 

 クランチャーリー邸でのグウィンプレンを見ればわかるように、実際、かなりの上位貴族である「クランチャーリー卿」がフェドロに言われるがまま行動していて、フェドロが操っている状態になっています。実質的にフェドロは、ジョシアナの使用人から、クランチャーリー卿の相談役?になっているようなものなので、フェドロの企み&裏切りはここまでほぼ成功しているのかなと。

 

 クランチャーリー卿に対してフェドロが「すべて閣下の所有物です」と暗にジョシアナも含めて言うところなんて、完全にジョシアナをもの扱いしてクランチャーリー卿を上位に置いているわけで、これもその場ではわからなくても後でジョシアナが気づけば裏切りですね。このあたり、再演ではもっとわかりやすくなっているようですが、再演観られていないので確認できていません。

 

 クランチャーリー卿とジョシアナの結婚も、ジョシアナを嫌っている女王に、クランチャーリー卿が醜い口裂け男だと吹きこめば高確率で成立しそうですし、これもフェドロの企みだと思っています。

 

★ジョシアナに対して忠誠心が無いとバレる

 あとは、庶子であるデヴィッドを馬鹿にしているところをジョシアナに見られていて、ジョシアナに恩を感じているどころか庶子であるジョシアナを内心馬鹿にしていることがばれた、のも裏切りの1つかなと。

 

 

 

★まとめ

①主人であるジョシアナに隠れて別の上位貴族であるクランチャーリー卿に近づき、ジョシアナを捨てて都合よく操れるその貴族に乗り換え、その貴族とジョシアナを結婚させるように動いた

②ジョシアナに恩を感じているどころか内心で馬鹿にしていた

が「フェドロの裏切り」かと思いました。

 

※追記

 原作では、フェドロ(原作ではバルキルフェドロ)が瓶の開封官に願い出たのは女王に近づくためで、そうしたのは自分の出世のためではなく、他の貴族の出世を邪魔し、不幸にするためとあるそうです。

 ミュージカル版のフェドロは野心的なものを感じるけど、原作のフェドロはとにかく「貴族を不幸にしたい」「貴族の不幸が自分の幸せ」というのが行動原理っぽいです。

 原作をきちんと読んだらまた別の解釈になるかも。

 

画像は

natalie.mu

より。

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