hyuga_kabocha(まっきー)のブログ

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「石川禅と塩田明弘が語るミュージカルの魅力」受講メモ

1017日(金)、朝日カルチャーセンター(新宿)で行われた、
石川禅と塩田明弘が語るミュージカルの魅力」
について、覚えていることをつらつらと書いていきます。記憶違いがありましたらすみません。
 
▼禅さん&塩田さん登場。禅さんは緑のジャケットです。
カテコのように、お互いを紹介しあってスタート。
 
▼用意されていた椅子の高さが高すぎる話から、
「この間,吉野圭吾とトークショーやったんですけど、足長いからこれ見よがしにこーーんなやって座ってましたよ!」
と会場のファンを沸かせる禅さん。
禅「アリスの初演を観た人ってどのくらいいらっしゃいます?」(ほぼ全員挙手)
塩「禅さんのファンって人どのくらいいらっしゃいます?」(ほぼ全員挙手)
塩「僕のファンって人どのくらいいます?」(ぱらぱらと挙手)
塩「全員挙げて欲しかった!!!」
コンダクター塩田さん、今日もノリノリです。
 
▼一方、禅さんもアリスの稽古を17時半までやってから駆けつけた(他のメンバーは21時まで稽古)とのことで、ナチュラルハイ。
汗びしょびしょなのを、楽屋で髪だけドライヤーで乾かして出てきたとのこと。アリスの台本を見せながら、
「台本だと3行で済むだけど、演じるとこれが歌って踊って10分以上ワンシーンで続くんです!言葉だと3行だけど!!!」
 
▼と、軽くアリスの話をしてから,ミュージカルのお話へ。
最近の帝国劇場はミュージカルがほとんどだけど、ちょっと前までは芝居がほとんどで、ミュージカルは年に2本くらいしかなかった
→本当にミュージカルが増えた
→まぁでも最近はジャニーズという新勢力が参入してきたね
という話から、
塩「禅ちゃん、白のナイトをジャニーさんに観てもらえば?気に入られるんじゃない?」
それは楽しそう。
 
 
▼ここから突然、塩田さんが真面目に「お芝居の起源」「ミュージカルの起源」について語り始めます。
禅さんの「コロッセアム」の発音がとても綺麗だなー(←)と思いながら聴き始めたのですが、演劇と女性の話から島村抱月の芸術座と松井須磨子の話になり、名前しか知らなかったけどそういう流れなのね~と、ちょっとだけちゃんとミュージカル講座の受講生気分。
しかし、歴史的に西洋と東洋で「芝居」や「役者」というものの起こりやその意味合が違う、というところから「役者は,観てくれてる人は知ってくれてるけど、それ以外の人にとってはものすごく社会的地位が低い」という話になって脱線。
 
▼禅さんの忘れもしないエピソード。禅さん26歳。
劇団の先輩の家の隣で殺人事件が起こり、劇団員に出頭命令が来て事情聴取されたけど、ほとんどが「26歳にもなってちゃんと働かないでこんなことばかりして~」という説教だったこと、
取調室が刑事ドラマで見るのと全く同じ、というかむしろ狭くてびっくりしたということ、
埼玉の家から世田谷署に行ったら交通費が出たこと、などなど。
 
▼そこからさらに塩田さんが、
「僕も取調室連れていかれたことがある! 忘れもしない……えっとどこだっけ」
コントか。
 
傷害事件が起こったときにたまたまゴルフクラブ持ってたら、そのままパトカーで車ごと挟まれて連れて行かれたらしく、仕事何をやってるんだと質問され、ちょうど持っていたミュージカルのチラシを全部広げて「ミュージカルの指揮者だ!」って言ったら「はあぁ?」って顔をされたとのこと。
 
▼と、ここまで話してはっとして、突然ミュージカルの歴史に戻ります。
塩「日本で最初の翻訳ミュージカルって何か知ってますか~?」
「マイ・フェア・レディ」と答えた方がいて、正解。
ここで塩田さんが「そう!江利チエミさんと高嶋兄の~」と言ってしまって会場爆笑。
塩「あっ、違う父!高嶋父!!! 1964年!」
禅「はいっ! 僕が生まれた年です、ちょうど50年ですね」
初演はアーニーパイル劇場こと、東京宝塚劇場

禅さんの「なんでアーニーパイルなんて名前か知ってますか~?」の質問に、後方席の端で「進駐軍に接収されてたから~」と心の声を出しつつ手を挙げていたのですが、2人に全く気づかれず。
まぁそんな位置に座っていたから、こんなごりごりメモをとっているわけですが。
あ、ちなみに禅さんの顔をガン見してにこにこしながら、手元を見ずにひたすらメモっている怪しい人間でした。
 
▼ちょっと間が思い出せませんが、ここから西洋のオペラの話に。
ワーグナーが3日がかりくらいでオペラをやっていた、というあたりで出た
「一時期の蜷川さんみたいな感じか!」
のコメントと、その納得されっぷりが面白かった。
ワーグナーなどの長いオペラへの反動からオペレッタが生まれた、という話は覚えていますが、ここから運動会でかかる音楽の話になり、最終的に禅さんと塩田さんがガンガン口ずさむことになった経緯は思い出せず。
 
▼その後、塩田さんが「マドリガル」の指導をしてアマの世界大会で1位,2位をとったという話から、歌における日本人と外国人(西洋人)の違いについて。
四畳半の部屋でピアノで音をとって歌を覚える日本人と、大きな教会でハーモニーを聴きながら歌を覚える西洋人。
天上の神に歌を届けるためにより遠くより響かせて歌う西洋人と、地上の同じ高さにいる神に対して下から声が届くように地を這わせるように歌う日本人。
(ここで禅さんが、「まぁ熊川哲っちゃんはポンポン飛ぶけどさ」と挟んだのが面白かった。)
こんな日本と西洋の音楽の違いについての流れの中で、養成所のころに謡曲もちょっと勉強したという禅さんが、ちらっと謡曲も口ずさんでくれたのも嬉しかった。
 
 さらに言語的な要素では、よく言われる、「1音に乗せられる言葉についての制約」に加え、言語によって声の出し方も違うことに触れていました。
 たとえば韓国語とかは言語そのものが頬骨で響かせる発音になっていて、骨もそれに応じて発達しているので、頬骨で響かせる発声ではとても有利と。
逆に日本語(日本人)で有利なのは、歌で1音をのばすことに慣れていること。
説明を上手く再現できませんが,
「トラディッショーーン」が「しきたりーー」になり,同じ音に
「ショーーン」と「りーー」を乗せているわけですが,
この「りーー」をのばすのが、外国人にはとても難しく、外国語だとべらぼうに上手く歌える歌手が日本語の歌で苦戦するのはここだそうです。
 
 日本人で外国語でオペラを歌い成功しているオペラ歌手はいっぱいいるわけで、日本人が歌が下手なわけではなく、結局日本語と西洋音楽との相性との問題、という感じの話に。
 
▼さらに、西洋と東洋の劇場の違い。
 西洋の劇場・舞台は縦に広がりが大きく、東洋の劇場・舞台は横に広がりが大きい。
西洋の劇場は壁画みたいに舞台を見るのに対し、東洋の劇場は横の視線の移動で物語を展開したり舞台を転換したりする。
 西洋の舞台の木目は縦(舞台奥から客席に向かう)になっているのに対し、東洋の劇場は木目が横(舞台袖から舞台袖に向かう)になっていて、後者はやはり音が遠くまで飛びづらい。
塩田さん曰く、日本の劇場で唯一、木目が縦なのが博多座で、感動して劇場の人に聞いたら「いや、そこまで考えていたかはわからないです」とあっさり言われたとか。
 
▼ここから禅さんとの話に。
初めて一緒に仕事をしたのは、禅さんの初ミュージカル「ミス・サイゴン
塩田さんは禅さんを見て、見た目で劇団四季の役者だと思ったけど、稽古を見てすぐに違うとわかったとか。
その理由についてはいろいろ言い回しの検討が行われた結果、「芝居が泥臭くて土着的だったから」ということになったようです。
 
▼次の一緒のお仕事が「レ・ミゼラブル
禅「マリウス観たって方、どのくらいいらっしゃいますかー。若い時のやつです。最近(スペシャルキャスト)の、あれは無しです。46歳は無しです」
ちなみにこの46歳の禅マリは2人から言われ放題で、
「とっつぁんマリウス」
「かなりぽっちゃりマリウス」
「重力に逆らえないマリウス」
「背負うキーヨさんも大変だっただろうマリウス」
えー、私は46歳の禅マリしか観たことないんだけどなーと思いつつ。
 
▼しかし塩田さんはとにかく、禅マリウスを大絶賛。「あのマリウスは他にいない!」
そもそも塩田さんが、「あの話はマリウスが主役!」と言い切るくらいマリウスを重要視しているようです。
「マリウスは全ての登場人物の要素を持っていて、物語はすべてマリウスの視点で描かれている」
「だから、レミゼの良し悪しはどんなマリウスかで決まる」
「禅マリウスは本当にいろんなものを合わせ持っていて、本当に良いマリウス」
 
▼禅さんは、マリウスは確かに重要だけどそこまででは、という感じでしたが、「観客にいちばん近いのはマリウス」とはおっしゃっていました。
禅「でも、登場まで1時間かかるんですけどね」
塩「えっ!あっ本当だ!それまで何してるの?!」
禅「アンサンブル6役やってます。7役目がマリウスなんです」
 
▼ここで熱くなってきたところで、ちょうど1時間が経過。残り30分。
「アリスの話を全然してない!」と気づいた2人ですが、それでもレミゼに戻ります。
禅「じゃあジャベールは?ジャベールはどうでした?」
塩「ごめん、僕ジャベールは本っっ当に鹿賀ジャベールが大好きで」
禅「ああ、鹿賀ジャベール様はそれは僕も大好きだし」
すごい、鹿賀ジャベールに自然に「様」がついた禅さんw
 
▼ここでスペシャルキャスト版時の鹿賀ジャベールの2小節遅れ事件について。
スペシャルキャスト版は、鹿賀さんが演じていたときよりも15分ほど短くなっているせいで、ジャベールの歌の入りが2小節早くなっている歌があったらしいのですが、鹿賀さんはずっとやっていたタイミングで入ってしまったという。
(つまり歌の入りが2小節遅れた)
禅さんも「えええっ!」って驚いたし、塩田さんは「えええええ入って来ない?!!!!!」と驚き、全力でオケに「2小節戻して!」と指示を出して乗り切ったらしいですが、舞台上の鹿賀ジャベールは「俺は間違っていない」風に全く動じず。(さすがジャベール、さすが鹿賀ジャベール)
しかし、ちゃんと終演後に「塩ちゃん、ごめん」と謝りに来たそうです。
鹿賀さんかわいい。鹿賀ジャベールかわいい。大事なので何度でも言いますが鹿賀ジャベール本当にかわ(以下略)
 
▼ここで突然、
塩「鹿賀さんは長嶋(茂雄)さんで、禅ちゃんは王(貞治)さんだと思う」
禅「いや僕プロ野球全然わからないです」
塩「禅ちゃんも最後は感覚っていうところはあるけど、ちゃんと理論的に考えて、コーチとかできるでしょ。鹿賀さんは天才肌というか…長嶋さんは『ボールがポーンと来たらポーンと打つ』とか言っちゃう人なの。でも長嶋さんと王さんだから、鹿賀さんと禅ちゃん合うと思うよ」
もちろん合うと思いますよこのお2人共演舞台ウェルカムです熱望ですなんて俺得な。
 
▼続いて
禅「で、次が『回転木馬』で,初のカンバンだったんです。」
塩「アンサンブルから始まって、3作品目でカンバンってすごいよね~、あ、でも『ジキル&ハイド』の禅ちゃんの役の変化も面白かったよね」
禅「僕の役が出世魚みたいに変わったやつですね。
そして塩田さん、時間が無くなってきたから、『ジキル&ハイド』→ワイルドホーン→『アリス・イン・ワンダーランド』に一気に話を持っていこうとしてますね?」
塩「なんでそういうこと言うの!言わなきゃみんな自然に聞いてくれるのに!!!」
 
▼とか言いつつ、ジキハイ話。
禅さんは、初演・再演でジキルのライバルであるストライド
(※ここで「ライバル」を「アルバイト」と言ってしまうくらい禅さん稽古でお疲れ)、
再々演ではジキルの親友であるアターソンを演じたわけですが、
塩「どっちの役が好きだった?」
禅「どっちも好きですけど…。でも,年齢は1回り違うのに、鹿賀さんの親友を演じられたという意味ではアターソンかな。レミゼでずっと鹿賀さんと一緒にやっていたコンビネーションが活きたし。」
ああ、鹿賀さんファンであり禅さんファンである人間にはなんと嬉しいお話でしょう♪
 
▼このジキハイで、ジョン=ケアードは初めて禅さんが台詞をしゃべるところを観たとのことで(レミゼは歌ですからね)、これが来年の
ジョン=ケアード演出の『十二夜』につながったそうです。
ちなみにこのとき禅さんがさらっとこの十二夜を「ストレートプレイ」と言ったので、どこまで本決まりかはわかりませんがストレートプレイの可能性が高そうです。
 
▼「『ジキル&ハイド』の音楽は、ワイルドホーンが大学生くらいの時から足掛け10年以上かけて作った音楽。
これに対して『アリス・イン・ワンダーランド』の音楽は、サラ=ブライトマンの伴奏もしていたワイルドホーンの、ポップスの要素が強く出た作品ばかりで、『ジキル&ハイド』とは全く違う」と塩田さん。
上手くつながりましたね、ということで話はようやくアリスへ。
 
▼禅さんはとにかく「大変」と。
塩田さんが「どの曲も聴いている以上に歌うのは難しいよね~」と言っても、禅さんは「難しい以前にしんどい」。
 
禅「マッドハッターは椅子に座ってせり上がって登場だし、芋虫も椅子が動いて登場だし、エル・ガトも車に乗って登場なのに、なんで俺だけ階段2往復しながらの登場なんだよ!」
 
登場した瞬間に転んで,「転びましたー!」って言いながら飛び出して「でも飛び出ましたー!!」と言いながら演技を続けた回もあったと。
 
 ちなみに、初演時はワイルドホーンが聴いて「歌がダメ」と言われたら困るから、歌を生かすためにかなり振りを減らしてあれだったそうです。
 
 それに初演時はミュージカル初めてのJOYがいたので、振りがかなり手加減されていた(と現在稽古して痛感している)らしく、振りが2倍くらいになっているそうで,「笑いに来いよ」と自嘲?気味。
それは全力で拝みに参りますが、「早いうちに観に来たほうがいい。いつ怪我するかわからない」は本音なんでしょうが洒落になりません。
お願いですのでくれぐれもお気をつけて、どうぞ千穐楽まで怪我の無きよう。

▼振りだけでなく、舞台衣装の厚さというのがかなり大変らしく、体温調節ができない→乳酸がたまる→疲労がすごい、と。
稽古では平気でも、舞台衣装でやると動けなくなるくらい疲労するらしいです。
オズの魔法使い」をやったときは,舞台衣装を着ての稽古が始まった日から、袖に「ド」「カ」「ブ」「ラ」(ドロシー、カカシ、ブリキ、ライオン)とそれぞれ書かれた酸素ボンベが2本ずつ、計8本並んだという恐ろしい話が。
1回通しでやって、4時間経っても全く回復しなかった疲労が、酸素を吸ったら「あと2ステできる!」というくらい回復したので、アリスも酸素でがんばる、とのこと。
塩「ある男優さんも酸素大好きみたいですもんね、カプセルとか入って」
禅「鹿賀さ…」
塩「あ、名前言っちゃった」

▼あと、かなり低めの声を出し続けるガーディナーの合間にやったアリス制作発表イベントでは、白のナイトの原曲キーがまったく出なかったそうです。
濱めぐさんもLNDのクリスティーヌからカルメン(こちらは高→低)で声が出なくて苦労したそうで、これは歌う音域が決まっているオペラ歌手とミュージカル俳優との一番の違いだよね~と。
 
▼今度のアリスについて
禅「鈴木裕美さんが初演と同じことをするわけがなく、本当に初演と違う。演るのは難しいけどすごく面白い。1幕の人間のジャックの動きや表情がかなり違っていて、リアルになっています。現実世界とワンダーランドの違いをよりはっきりさせたい演出みたいです。」
 
▼最後の質問コーナー
Q「アリスキャストの中でいちばん禅さんに近いのは?」
 
禅「やっぱり白のナイト。というか、裕美さん俺のことわかってて書いたのかというくらい。あそこまでヘタレではないですけど。ガーディナーは自分に無いものを出すけど、ジャックは自分の中にあるものを引き出す感じ。」
 
Q「通販が大好きと聞きましたが、最近のおすすめ商品は何ですか」
 
禅「ドライオレンジ。公演の合間にファミマで見つけて、いつもなら買わないけど、身体が欲してたのか無性に食べたくなって、食べたらとても美味しくてハマった。通販で2kg(!)買って、1kgは稽古場でみんなに配ったけど、みんな美味しい美味しいって食べてすぐに無くなった。」
 
▼そんなこんなで時間オーバーしながらも終了。
最後の挨拶で塩田さんが「みなさま、本日は『石川禅と塩田明弘が語るミュージカルの魅力』…そうだったの?!」と言いながら爆笑。
塩「今初めてタイトル読んだ!」
禅「全然語ってない!」
塩「この内容は2回目に!禅ちゃんが語るのを遮っちゃいけないと思って脱線修正できなかったらこんなことに!」
禅「僕は今日稽古で疲れてたからそんなにしゃべってないですよ!塩田さんが今日はいっぱいしゃべるから楽だなと思ってましたもん」
塩「禅ちゃんファンに怒られるごめんなさい、また次の機会に~」
 
そう言いながら退場。禅さんはいつものとびきりスマイルで去っていきました。
いやはや、語った内容はもちろん、爆笑し、頭を抱え、語り、笑う生の禅さんを堪能できて楽しかったです。
 
▼あとは文章に起こせなかったメモ(どんな流れでこうなったのか思い出せない)を書いておきます。
塩田韓国語モノマネ「パンニハムハサムナ」
塩田・禅、サラ=ブライトマンのラスベガスショーを絶賛・宣伝。