hyuga_kabocha(まっきー)のブログ

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ミュージカル『生きる』10月12日鹿賀・新納回の感想

鹿賀さんの68回目の誕生日の10月12日,鹿賀さん・新納さん回の「生きる」を観てきました。
この日の終演後に行われたアフターバースデートークの内容は,別の記事にアップした通り。
本編の感想はその日に連続ツイートしたのですが,書き足りなかったことを追記しながらブログにもまとめておきます。

 1幕冒頭は,「鹿賀丈史の!萌えの!詰め合わせか!」
ヒゲ剃りから戻ってきてアゴなでなでとか!
生着替えとか!スタイル良すぎるし足長すぎだろ!
ほっぺぷにぷにとか!
お耳ふさいでうずくまるとか!
映画館の椅子で大口開けて寝こけるとか!
エスキリストと小説家が言うのはあれあて書きですか?
とはしゃいでおりました。

 鹿賀勘治が役所に出勤してくるシーン,前から2列目上手席で観ていたので,舞台の奥に背広にロングコート姿の鹿賀さんが立ったのが見えた瞬間,あまりの恰好良さに軽く笑ってしまったんですけど,舞台に入ってきたら生気もやる気もない冴えない昼行燈っぷりでさすがだなと。
あの溢れる恰好良さを演技力で完璧に封じるのすごいですよね。
今回観られなかったんですが,市村勘治は市村勘治であの溢れる生命力を完璧に封じていたらしく,ほんと名優の演技力しびれる。

 癌の宣告を受ける前後,ちょっとコメディ要素のあるシーンですけど,コメディをこなす鹿賀さんも大好きです。
まぁその後の橋のシーン,鹿賀さんに橋と言えばレミゼクラスタは「鹿賀ジャベール!」って内心叫びますよね。だめだめここで死んじゃう。

 家に帰って,妻の遺影を抱きしめながら歌う「ゴンドラの唄」。
歌はもちろんのことですが,背中丸めてくしゃくしゃになって歌うその様子だけでも,新納さんが「抱きしめたくなる」というのがわかりますよね。

 新納小説家との出会いからの夜遊び。
新納さんはこれまで,ラカージュオフォールのシャンタルとアリスインワンダーランドの芋虫でしか観たことがなかったので,冒頭からずっと
「あれ?かっこいい?新納さんめちゃ色気あってかっこよくない?あれ?すごくかっこいいし可愛いしすごくよくない?」と混乱していました。
端的に言うと,大好きです。ましてあの,溢れる鹿賀勘治への愛。
鹿賀勘治を見て泣きそうな顔をしている小説家の顔を見て泣きそうになったよ。

 他の方のツイートで「小説家は自分をメフィストフェレスと言ったけど,小説家が勘治に魂を奪われたよね」と言っていて膝を打ったのですが,その通りですね。
これは勘治と同様,小説家もまた「二度目の誕生日」を迎え,生き始める物語なんだなと。
夜遊びのシーンは,最後に耳を押さえてうずくまる鹿賀勘治の可愛さ,これに尽きる。

 そして,とよとのほっぺぷにぷにからの街遊びシーンはサービスショットの連続なわけですが,とよが嫌がり始めてからもつきまとうシーンになると,ずっと内心で「犯罪!完全に犯罪になっとる勘治!」と思いながら観てました。
市村勘治だと子犬がオドオドしながらついて回る雰囲気らしいのですが,鹿賀勘治からはなぜか犯罪臭が。なぜでしょうねこれ。
そりゃ噂にもなるし,息子も警戒する。

 そういえば,勘治が夜遊びに準備した5万円,観劇中はぴんとこなかったのですが,公演パンフレットによれば当時の公務員給与が約5000~7000円の時代だから,給与8~10か月分くらい。
妻に新居をせっつかれ,「自分の給与じゃまだ…」と言っていた矢先に父親がこんな額を下ろしてぱっと使ってたら,そりゃ頭に血も上るか。
でも,あの勘治の「話がある」に「金ですか」の返しはしんどい。
 
 でもだからと言って,入院したくないからと言って,何も言わないのもまたなぁと。
自分のことで精いっぱいなんだろうけど,ほんととよのことも光男のことも考えてないですよね。小説家がいたからよかったけど,いなかったら光男に何一つ伝わらないどころか激しく誤解されたまま,本人を困惑させて悲しませたまま,完全に自己満足ですよ。いや本人はそれでもいいのかもしれんけど。
いつ死ぬかわからないのだから,全部終わったら話すプランもいいけど,
「保険として事実を説明した直筆の遺言書の一つや二つ残しておけよ」というツッコミが頭から離れませんでした。野暮な人間ですみません。

 でも何だかんだ言っても,1幕最後は「二度目の誕生日」を歌い上げる鹿賀勘治にすべて持っていかれ,2幕最後は鹿賀勘治の「ゴンドラの唄」と,その光景と,去っていく勘治の後ろ姿と,ブランコの上に残された帽子の美しさにすべて持っていかれるというね。
これぞ役者の力,音楽の力,舞台の力,ミュージカルの力ですよ素晴らしい。

 2幕,巨大な時計と人がほとんど帰った後の役所の雰囲気が,印象的で大好きでした。
 勘治がボコボコにされるシーンは,鹿賀ファンならジーザスを思い浮かべるのかもしれませんが,目の前に鹿賀さんが倒れたので,そんなことを思う間もなく呼吸を忘れないのが精いっぱいでした。
 助役を追いかけ回すシーン,市村勘治はひたすら真顔で(※伝聞),鹿賀勘治はちょっと笑いながら追いかけまわして,まぁどっちも怖いわなと。
 あ,でも料亭のシーンは川口竜也さんの組長ブチ切れシーンがあまりの迫力でびっくりしました。川口さんの厚い美声を全部ドスをきかせるほうに回すとこうなるのね。

 アンサンブルさん,松原さんとか個人的に好きな方も何人かいらっしゃったんだけど,目が足りない。俵さんは今回初めて認識しました。そうかこの方がリュークやったのか。それも観てみたかったなぁ。メインキャストはもちろんですけど,男女のアンサンブルの厚みにホリプロの本気を感じました。

 市原隼人さん,光男の芝居もミュージカルの歌を歌ってもぴったりで違和感がなくてびっくり。お芝居も相手が鹿賀勘治か市村勘治かでちゃんと変えていらっしゃったらしく,素晴らしいなと。今後ミュージカルに出るかはこの作品次第と言ったと亜門さんが話してましたが,他の作品でどうなるかちょっと観てみたいかも。
小説家がとっても美味しい役である一方,光男はちょっと損な役回りでもありますしね。葬式後に小説家が光男を殴るシーン,たぶんほとんどの客が心の中で「話を聞けー!」って一緒に殴ってるんじゃなかろうか。

 まぁでもさっきも書いた通り,最後はすべて持っていかれる。観劇から10日以上経っても,「二度目の誕生日」を歌う鹿賀勘治と,ラストシーンの鹿賀勘治の歌と光景が頭から離れず,ずっとぐるぐるしてる。
 ミュージカルデスノートのように海外版権輸出を念頭に置いた作品ですが,これはどなたかも言っていた通り,最初はNINAGAWAマクベスみたいに,日本人キャストごと持っていってほしい作品のような気がします。

 自前で版権を持っているおかげでCD発売は確定,映像化もWOWOWさんのカメラが入ったようで期待大でとてもありがたい限り。
あとは再演決定の報を待つばかりでしょうか。それも鹿賀さんがおっしゃったように,ロングランできるくらいの再演。楽しみです。

 日本発・世界初演のミュージカル「生きる」,公演期間もあと一週間を切り,千穐楽まで無事に,充実したまま走りきることを祈りつつ,感想を終わります。