hyuga_kabocha(まっきー)のブログ

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レディ・ベスの感想&妄想

ミュージカル「レディ・ベス」初演@帝国劇場。2回観劇した感想です。
公演期間のかなり後半に2回観ただけの個人的な感想&妄想です。役者萌え人間で偏りがあるのはご勘弁ください。
Wキャストのことも語りますが、残念ながら吉沢メアリーと平方フェリペは観られませんでした。
 
まずオープニング。傾いた盆の上に天球儀。美しいです。
そこにアスカムが1人現れて歴史を歌い始めるのですが、最初に観たときはちょっと面食らったくらいの「説明歌」(←と勝手に呼んでいる)。
物語に必要な知識として、ヘンリー8世とカトリックプロテスタント、最初の妻キャサリンとメアリー、2番目の妻アン・ブーリンとエリザベスについて、物語に最低限必要な知識を詰めこんでいます。
ここの音楽は好きなのですが、あまり無理に歴史的事実だけが歌にされているのは個人的には好みではないので、ここは語りでもいいなぁと勝手に思ったり。ぐっさまも丸さまも、語りだけでももたせられる実力だし。
 
さてキャストの印象比較。まず山祐アスカム。
目の前にいるのに天から降ってくるみたいな声で、催眠術みたいな心地よさです。
2幕で歴史を語る場面も、神様が「こういう風にしてみた」と語っているみたいに聞こえたし、内容よりも山祐の語りを楽しんでしまいました。超越した存在が狂言回しをしているようで、ただの家庭教師には見えません。
でも、ベスが絡むと人間的な愛情も怒りもちゃんと見せます。ベスとのかかわり方は「家庭教師」の要素が強く、ベスのことを想い、心配し、愛情をもって包みこむけど、距離感もしっかり保っている感じ。
 
それに対して石丸アスカムは、家庭教師というよりも「学者」寄りで、かつ「お父さん」寄り。もちろん家庭教師としての一線は引いていますが、大事な娘を心配する父親的な愛情をひしひしと感じます。
地に足着いて、娘思いで、何でもできるかっこいいパパ風の家庭教師。石丸さんが演じると役のヒーローっぽさが3割増しだなぁと思いつつ。
 
あ、そうそう。ツイートで、「プロテスタントのアスカムが十字切るのおかしくない?」というのをちらほら見かけましたが、プロテスタントでも派によるみたいだし、イングランド国教会は切ってもおかしくないようです。
この作品中は「国教会」の言葉は使わず、「プロテスタント」で統一されていましたが。
宗教的なことや作中の言葉とかも、歴史的な厳密さよりも作品としてのわかりやすさを重視しているでしょうから、細かいことは気にせずに観ています。
そもそもロビンを中心に、作品全体がファンタジーなのですし。
まぁ「イギリス」「イングランド」「英国」の言葉の混在が気になったというのはわかる気がしますが、混在そのものよりも、どちらかというと言葉を入れづらい歌詞で「イングランド」をねじ込んで、台詞で「イギリス」というシーンがあったほうが不思議だったかな。メロディによっては「イングランド」のほうがリズムがよいのかなとも。
 
話を戻して、ヒロインのベス。
平野ベスはまだ幼いけど王女としてふるまおうとしている感じがとてもかわいい。花總ベスはガーディナーとの初対面シーンで「なりません!」と言うところですでに完全に生まれながらの王女で女王だなという感じでしたが、平野ベスは頭の良い普通の子が、王女として育てられて女王になる感じ。
いや、花總ベスの少女時代もかわいいのは間違いないのですよ。実年齢を考えると驚愕というか、私が高校生の時に観たときと寸分違わぬ御姿っていったいどんな魔法を
男装シーンは完全にサービスショットですね。
平野ベスの元気いっぱいももちろん良いし、宝塚雪組時代の「虹のナターシャ」ナタ公の花總さんも全く負けないというか、予想以上の声も出しての見事な男の子っぷり。
 
育三郎ロビンと加藤ロビンは、歌の良さもネタの面白さ(?)もそれぞれ違って甲乙つけがたい。
笑いをとるために挟むネタがそれぞれ違っていて、これはWキャスト見比べ甲斐がある。(いろいろあって細かく捕捉しきれないので淡泊ですみません)
 
未来メアリーは、予想を上回る貫禄の女王様っぷり。圧巻。
でも本当はものすごく純でかわいい人なんだろうなぁというのが、フェリペの絵を見たときのリアクションとか、細かいところから出ていて憎めない。
「悪魔と踊らないで」の後、メアリーがうっとりと左手を見つめるのはなんでだろうというツイートを見かけましたが、たぶんラストでベスが左手につけたのと同じ宝珠(イギリス王の3点セット=国王冠・王笏・宝珠)を見つめたんだと思います。イングランド王として、悪魔と踊らずにこの国にカトリックを復活させた!と思うシーン、なのかなと。
未来メアリーとは大きさも雰囲気も全く違うという吉沢メアリーも観たかったなぁ
 
和音ブーリンは歌声も佇まいも綺麗で、幽霊役にぴったり(と言っていいのかわかりませんが)。幽霊とはいえ,1幕ラストで浮いているブーリンへの違和感も,和音オーラと美しさで乗り切るぞ的なものを感じました。
「あそこ浮かなくてもよくない?」と最初は思いましたが、逆に、浮いて幽霊っぽさを出すならあそこしかないということか。
 
ブーリンは、主人公が1人の時にだけ現れる、人ならざる者という点では「エリザベート」のトートと立ち位置は似ていますが、
トートが「お前のことを本当に救えるのは俺しかいない」と脅す「死」であるのに対して、
ブーリンは幽霊ながら「あなたは1人じゃない。私もいるし、他にあなたのことを見ている人がたくさんいる」と、ベスを生へと前へと向かわせていて、全く逆です。
 
そして常にこのブーリンのそばにいる死の影「首切り役人」
作中には出てきませんが、本当にヘンリー8世がフランスから呼びよせた「ジャン=ロムバウド」という名の実在の(?)人物だとか。
作中、一言も発せず、動きと、おそろしくいい身体と、存在感だけで勝負というすごい役です。
さらに演じている笠原竜司さんはこの身体で驚異の46歳、「逃走中」のハンター1号機として「逃走中」にパイロット版からフル出場という。
首切役人も喋らないし、ハンター1号機も喋らないし、ちゃんと喋るとこ観てみたいかも。
カーテンコールで初めてマスクをとってあのイケメンを見せるというのはニクい演出です。
 
そしてフェリペ。本当においしい役だなぁ。
登場シーンの段階ではもっと嫌な奴かと思っていたけど、ロビンよりも現実的にベスを助けているし、ロビンたちも助けているし、私はロビンよりフェリペ派(白馬の王子様より権力のある玉座の王様派)(何の話だ)。
アスカム先生が言うように「人の価値は生まれや職業ではない、どれだけ変化を起こせるか」ということであれば、ベスに変化を起こしたのはロビンだから、ロビンのほうが重要人物なのでしょうけれども。
登場シーンごとに無駄に踊るところも大好きだし、かわいくてほんといい奴じゃないですか。
あんなに平民に深く頭を下げて教えを請える王子なんてありえないだろうとは思いつつ。
 
というか、フェリペは後のスペイン王フェリペ2世で、実在の人物ではありますけれど、この作中ではたぶんロビン並みにファンタジーな存在。実際のフェリペ2世はガッチガチのカトリックですし。
蛇足ながら、私は「花とゆめ」の『サラディナーサ』という作品でフェリペ2世と出会った人間なので、あまりのイメージの違いに付いていけず、フェリペ2世とは完全に切り離し、別の「フェリペ」という王子として観て楽しんでいます。
あまり歴史と照らし合わせると、「この後、ベスの英国艦隊が、フェリペの無敵艦隊を破るんだよな」とか考えてしまって複雑な気持ちになるので、やはりファンタジーとして楽しむのがいちばんだと思います。
 
というわけでフェリペ、古川フェリペの声も雰囲気もハマっていて、かなり好きな役です。
古川フェリペが好きなのでよいのですけど、でもやっぱり平方フェリペも観てみたかったので、観られなかったのは残念。
 
ガーディナー様は、決して小さくはないはずなのに、山祐アスカムと対峙するとどちらが司教かわからない(ぐっさまが大きすぎる&コロレド大司教の影が見える)。
でもくるくると軽やかに動き回り司教服の裾さばきでキメながらの、いい悪役っぷり、いい憎まれ役っぷり。
それでいて作中1、2を争うコメディ担当でもあり、かつ、かわいい。
そしてやっぱり役によって声が全然違う禅さんすごい。
ベスに対しての憎まれパートの台詞「ふ~く~を~着~な~さ~い」が頭から離れない。このシーン、ベスはもちろん裸ではないわけで、とてもキリスト教的というか司教様的な台詞。
ガーディナーとルナールの見せ場ナンバー「ベスを殺せ」では、ルナールに恋する乙女&安定の4回転+「しんどい」でした。かわええ。
長髪バージョンを観られなかったのがちょっと心残り。
 
圭吾ルナールは司教様に気に入られるのも納得の男前っぷりながら、キメキメポーズでキレッキレに踊られると、どこかの船上で見た白下着の貴族に見えて笑いをこらえるのが大変。
ただの退場シーンでそこまで足上げてキメなくてもよいでしょとにやにやしながら。
ガーディナーとのシンクロが好きなのはもちろんですが、「クール・ヘッド」でフェリペとビリヤード台上で並ぶところが好き。
「ベスを殺せ」での、台詞聞きとれないくらいの興奮っぷりはもはやネタですよね。
2幕のフェリペ退場のシーンでの
「とてつもなくクールヘッドなのかぁ~、他に好きな男がいるのかぁ~」のくだりは、
後から観たときのほうが確実にコメディ要素が増していました。とても楽しそう。
ルナールは、ガーディナーと絡んでも、フェリペと絡んでも、どっちも美味しい&楽しくていい。

白下着貴族から続くこのはじけっぷりにすっかりやられて、観るたびに圭吾さん好きになるのでちょっとまずいんですよね。これ以上、贔屓役者を増やすと財政が
 
とまぁ、キャストを中心に語ってきましたが、初回観劇時と2回目観劇時との違いが、公演を重ねたことで変わったのか、役者による違いか、キャスト組み合わせによる違いか、確かめたい
別の組み合わせでもう1回観たい、あの組み合わせと、あの組み合わせで観てみたい と、完全にWキャスト病まっしぐら。
(ラブネバのせいです。)
そして1階下手から観るか上手から観るかでこんなに違うから、2階席から観ると盆を含めてまた別の世界が観えるのだろうかああ(以下略)
 
音楽は、全体的に聴いていて楽しく心地よい感じ。
観終わった後も頭に残って離れない、という曲はちょっと少ないかなと思ったけど(エリザベート」比の個人的な感想)、1回目観劇後は「クール・ヘッド」が、2回目観劇後は「悪魔と踊らないで」「べスを殺せ」「人生は一度きり」が頭に残りました。
 
舞台や演出は、客席扉と客席最前列を使った演出が多くてびっくりしましたが、綺麗な舞台セットの数々も、傾いた盆を使った演出も、回る盆を使った演出も、文句なく良くて、この辺は改めて語るまでもないのかなと。
「帝国劇場で、ミュージカル観てる!!!」という楽しさが溢れます。

ハイライト版CDに入るかわからないけど、台詞や歌詞のところどころにとても印象的なものがあって、
やっぱりDVD化してほしい作品です(先日までご近所の日生劇場でやっていたあの作品もですが)。
Wキャストだから難しいのかなぁ(先日までご近所の日生劇場でやっていたあの作品もですが)。
 
そんなことを思いながら、帝国劇場に「今年はもう(たぶん)来ないからバイバイ~ありがとう~」と別れを告げ。
次は来年、ラカージュでまたいっぱい来るからね!!!